BlueHeronRods

初秋の道志川

このところ連日、冷たい雨が降り続いて気温も20度を下回り、夏はもうどこへやらすっかり秋だなぁと思い始めた頃、久しぶりにこの川へ行ってみることにした。
10月にもなれば普通は誰も夏のことなど思わないのかもしれない。しかし9月あたりがどうも微妙で10月に入ってすぐの頃はさらに微妙、暦の上ではとっくに秋には違いないが夏が大好きな自分はどうしても納得できず、その気配を探し求めてしまうのだった。

 ハスを狙って来たわけだが夜明けと同時にポイントに入り数回キャストを繰り返すも何も反応がない。
ライズもないし水温も低めで若干増水気味。
7~9月にはずいぶん楽しませてくれたのだが産卵期を過ぎ、津久井湖のアオコが減少してくると湖に戻ってしまうらしい。もともとが湖沼型の魚だから条件が整えば湖のほうが暮らしやすいのだろう。
堰堤下で30分ほどやってみたもののサッパリだったので1kmほど下流のポイントに移動。
ときどきヤマベがヒットしてくるものの真夏に釣ったようなデカいのはいなくて最大で15cm程度。
もちろん婚姻色はない。

 コレとアレが同じ魚なのか?と目を疑うほど質素なルックスだが
 引き締まった銀色の魚体はやはり美しい。
 そしてフライへの反応もシビアで出方も速い。
 きっちり流れに乗せないと出てくれないこともしばしば。
 10匹ほどヤマベを釣り、なんとか1匹だけ30cm程度のハスも掛けた。

徹夜明けで釣りに来てさすがに疲れてしまい、もう帰ろうかなと車に乗ったがもしやもう少し下流へ行けばハスに会えるかも?という思いがよぎり道志橋下へ移動。
でもハスは居なかった。居そうな場所にはアユのコロガシ釣り師が数名いたので遠慮せざるをえなかった。

ときおり大きなニゴイが偏光グラス越しに見えるのでマラブー系フライで底を引いてみるものの無反応。
1番ロッドでは探れる範囲も限られてくるので真夏以外の攻略法としては5~6番の遠投しやすいロッドでシンキングラインというのが良さそうだ。

ふと足元に目をやると石の周りにときどき黒いチチブがいる。そうだ、ザコ釣りマニアとしてはコイツを釣らないわけにはいかないなと思い16番ほどのビーズヘッドニンフを沈めてみると・・・スーッと寄ってきて停止、じっと見る、端っこだけ咥えてみる、一瞬で吐き出す。また動かす・・・スーッと寄ってきて・・の繰り返しでなかなかパクっとは食ってくれない。
もちろんリアル餌なら即座に丸呑みなのだがフライだと意外と難しい。

 やっているうちに夢中になってしまい、その楽しさがあまりに屈託なく、
 1匹釣れるたびにアハハと笑ってしまうのだった。
 もぐら叩き的な面白さとでも言うべきか。
 水槽で飼うために10匹ほどをキープして納竿となった。


 道志川と津久井湖が出会う場所。
 この風景を見るとなぜかとても強く郷愁のようなものに包まれる。
 形の崩れた積乱雲が北上していく様子はまるで夏の後姿を見るようだ。
 聞き分けのない私に夏がもう一度、サヨナラを言いに戻ってきた。
 そんな気がした。