BlueHeronRods

グラスロッドで楽しむコイ

先日、とても古いデッドストックのグラスブランクを何本か入手しました。
オレンジ色で半透明の綺麗なブランク。
記憶ではこのタイプの製品は70年代中頃に出回り、その後すぐにカーボン製が主流になってしまったため高級品はカーボン、安物はグラスといった区別がされていたように思います。

グラスには大きく分けて2種類があります。
初期のグラスはWoven glassと呼ばれるグラスの「布」をフェノール樹脂で固めたもので通称タバコグラスと呼ばれています。
これはガラス繊維が太く目も粗く縦繊維と横繊維が同じぐらいの配分(つまりまったくの布ということ)でブランクは厚ぼったく反発も弱い、そのため重くて遅くてヌケの悪い竿がほとんどでした。
初期のHeddon,Phillipsonがこのタイプです。
ブランク表面がデコボコとミカンのような肌で、経年変化でフェノールが酸化し赤く変色していきます。
それを隠す為に厚く下塗りされカラフルな塗装を施されている事が多いのも特徴です。今でも中国製の超安物投げ竿なんかはこのタイプです。

もうひとつはエポキシレジンで作られたグラスでPhillipsonのEpoxite(エポキサイト)が良く知られています。より目が細かく高品質なシートを使うことで薄く軽量で強度に優れたブランクとなりました。
と言ってもEpoxite自体まだまだボテっとしていましたがFenwick、Lamiglasの登場で更に進化し、すぐにカーボンの時代に突入してしまいます。
縦繊維に螺旋状の横繊維を重ねるという現在の製法はこの頃から主流になったようです。

で、先日入手した日本製グラスがどちらのタイプかというと、どうやら前者と同じタイプのようです。
しかしアメリカ製の物に比べるととても軽く、薄く、表面も綺麗で波打ちも無く全く別物と言って良いほどよく出来ているのです。
思うに日本の場合は振り出し竿が主流でしたから、アメリカ製のように分厚かったらブランクを順々に内側に納めるような仕組みには出来ないわけです。
アメリカ製品から得た製法を元におそらくものすごく苦労し工夫して、まったく次元の違う製品を作り出したのでしょう。

画像のコイは60cm以上、ティペットは0.8号、ロッドをバットから曲げてグイグイやっても切れないし折れない。なかなかのスリルを堪能できるのがグラスの良いところ。
真似するだけでは絶対に終わらない、日本人ならではのクラフトマンシップに深く感じ入りながらコイの重いファイトを楽しむのでした。

■ 画像のロッドは7’6” 5pc と7′ 7pc 4~6番 5本分だけ材料があります。ご興味ある方はお問い合わせを。